小児科の診察室では、赤ちゃんから中学生まで、多くの子どもたちが「咳がでます」と訪れる。
ありふれた症状の一つ。
そんな時、小児科の先生たちは、普通の風邪から重症の病気まで多くの病気を考えながら診察する。
どんな情報が必要になるのか
まずは、その子の「年齢」。
乳幼児と小学生、中学生では咳の原因が異なることが多い。
四種混合などの予防接種をスケジュール通りに終えているか。
そして「咳の性状」。
咳と言っても「コンコン」と乾いたものか、「ゴホン、ゴホン」と痰がからんだものなのか、「ゼーゼー」を伴って苦しそうにしているのか、「ケンケン」と犬が吠えるようなものか。
またや喉の痛み、熱もあるのかなども参考になる。
次に「経過」。
いつ頃から咳が出ているのか、どのくらいの期間続いているのか、昼間も夜も咳が出るのか。
次第に咳がひどくなってきているか。
微熱が続き、体重も減少するほどなのか。
また「家族歴」や「既往歴」も必要。
家族の中に、子どもと同じような咳をしている人がいないか、家の外で人混みなどに行く機会はなかったか。
ペットを飼っているか、たばこを吸う人がいるか。
乳幼児であれば、保育園、幼稚園への通園の有無や、そこでの流行疾患の有無。
これまでに入院するような重い病気になったことがないか。
家族に食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、結膜炎や鼻炎、気管支喘息などのアレルギー性の病気の人はいないか。
どんな場合に救急の対応が必要となるか
例えば、牛乳や卵、そばなどに食物アレルギーのある人が誤って食べて、咳がでる場合。「アナフィラキシー」
小さな玩具やピー–ナッツを食べて誤嚥してしまった場合。「気道異物」
高熱があり、喉を痛がり、よだれを流しながら苦しそうに咳をしている場合。「急性喉頭蓋炎」
犬が吠えるような、またオットセイのような咳をしている場合。「ウイルス性クループ」
突然の片側の胸痛を伴った咳の場合。「気胸」
熱が続いて、次第に湿った重い咳の場合。「肺炎」
などを考えることがある。
どんな時に検査が必要なのか
よく遭遇するのは、保育園に入ってから普通感冒を繰り返す場合。
時折1~2日の発熱があったり、症状が多少良くなったり悪くなったりしても、元気そうであれば経過観察されることが多い。
流行状況や接触歴からインフルエンザ、RSウイルス感染症、マイコプラズマ感染症、メタニューモウイルス感染症などが疑われる場合、それぞれの診断キットで検査が可能。
けれども症状がでてからある程度時間が経過しないと陽性にならない場合がある。
血液検査では、白血球数やその白血球のパターンで、原因を予測することもできる。
胸のレントゲン検査では、さらに多くの情報が得られる。
副鼻腔撮影では、膿性の鼻汁や湿った咳が長引いて副鼻腔炎が疑われる場合に行われる。
まとめ
子どもたちの咳や「ゼーゼー」は、小児科ではありふれた症状の一つです。
けれども中には、緊急性の高い病気も含まれます。
咳の性質や経過、その他の症状も参考にしながら小児科の先生たちは、診断しています。